助産師という仕事「若手助産師さんたちに伝えたい」
以前、助産師グループhug heartのブログの中に投稿した内容を再掲します。
日頃、こんな思いでママたちと向き合っております。
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平成30年末現在の就業助産師(仕事をしている助産師)は36911名。人口10万人対で29.2人である。
看護師の1218606名、人口10万人対963.8名に比較すると33倍の差があり、とんでもなく少ない。(看護師数の中には、助産師数も含まれる)
(データは厚生労働省衛生行政報告例の概況より)
とんでもなく少ない上に、「どんな仕事をしているの?」や、「自分にはあんまり関係のない職業」とあまり知られておらず、また悲しいことに、同業である看護師からも「助産師ってお産以外のことはわかんないんでしょ?看護師の資格って持ってるだけで何もできないんでしょ??」という風に言われたことも少なくない・・・。
助産師の資格は、看護学校、看護大学などを経て、さらに助産過程の学習を重ねていくのだが、その後の就職先は
・産婦人科クリニック
・総合病院
・行政などの保健分野
など、さまざまである。(これは看護師も同じ)
中には『私は赤ちゃんが好きで、分娩のお手伝いをしたいから助産師になりました。だから赤ちゃんに関することや、分娩に関すること以外のことはやりたくありません。』と、”産科以外の経験はありません”という助産師もある。
かたや、
『助産師とは言えど看護師でもある。助産師の仕事をするうえで、看護師の仕事が出来なくては意味がない。助産業務だけでやって行けるとは思わない』という助産師もある。
これは、それぞれの仕事に対する思いや“看護観”・“助産観”というものによるため、何が正しくて何が間違っているとは言えない。
しかし、出産する人はすべて、完全なる健康体の人ばかりとは限らない。何も問題がなく、ノーマルで出産を終える人ばかりではない。
となると、必要最低限の知識と経験は必要であり、“万が一”に備えた学習と、デモンストレーションを積み重ねていなければ、いのちを救うことはできない。
筆者は、これまでに関わってきた後輩助産師たちに
・どんな思いを持って助産師を目指したのか
・これからどんな助産師になっていきたいのか
・どんな働き方をしていきたいのか
を問い、よく話をしてきた。
多くの後輩は「あったかい雰囲気でお産ができるように」や「感動するようなお産になるように」、「助産院でのお産のように、医療が支配しない自然なお産を」など、とても聞こえの良い100点満点の目標を話してくれる。
しかも、あたかもそれがすぐに叶うかのように!!!
ねえ…はじめっからそんなもんできると思ってんの(⊙_⊙;)??!!
そして、まだ経験2~3年のヒヨコであることを忘れ「失敗しました…」「うまくいきませんでした…」と必要以上にダメージを受ける…
ねえ…そんな高度なこと、練習もなしにやろうと思ってたの?? うまくいかなくて当然でしょう…??!!
「あのね、焦る必要はない。2~3年で何もかもうまくいくはずがない。小学校2年生が少しずつ漢字を覚えてきたところで、英検2級に落ちました、って言ってるのと一緒。失敗でへこむんじゃなくて、できることやうまくいったことを増やしていきなさい。それでも私たちはいのちを預かってる。だから、その責任をもってしっかり勉強をしなさい」と伝える。
(今の私なら、「ラジオ体操をやっとできるようになった子が、NIZIプロジェクトに落ちました、って言ってるのと一緒」と言うな。笑)
予想をはるかに超えたいばらの道を乗り越え、たくさんの血を浴びて(これは冗談ではなく、大量の血を浴びる…)、悲しい思いや、辛い別れなども経験し、修行に修行を重ね、その積み重ねで、理想のお産を取り扱うことができて、ママたちはもちろん、助産師自身も満足できる。
ここにたどり着くのがたった2~3年であるはずがない。
逆に、2~3年の経験で自信満々になってしまっている助産師がいたら危険極まりない。それ以上の、成長が期待できない。
看護師経験を経てから助産師になる人や、高校卒業からストレートで助産師になる人、自らが出産したことを気に看護の勉強から始めて助産師になる人…たくさんのケースがあるが、どれをとっても”焦りは禁物”であることと、”歩みを止めるな”ということを熱く伝えたい。
若手助産師には、ベテラン助産師にない気づきがあったり、一生懸命な姿勢がママたちから好感を持たれることも多い。なにより、持っている情報が新しく、ベテランたちには刺激を与えることができる。周りから応援されながら成長していく姿はとても美しい。
hugheartでは、助産師の後輩教育の機会を設けており、オンラインで学習をしながら、他の施設で働く助産師との交流も行っている。
オンラインであるゆえ、通常であれば、出会うことのない場所にいる助産師の仲間や先輩の意見を聞くことで、世界を広げてほしい、狭い狭い井戸の中で頭カチカチになってほしくない、型にはまらないいろんな視点で考えられる助産師を目指してほしい、という思いでたくさんのメッセージを送っている。
日々の業務に追われ、”理想の助産師”に近づけずにいる助産師や、自信を無くしかけている助産師がいたら、ぜひ、hugheartに連絡してほしい。
助産師って素晴らしい仕事!!私って素晴らしい仕事ができるんだ!!と、心新たにしてほしい。
助産師がイキイキ、キラキラ,堂々としていないと、いのちを預けるママたちがどんなに不安になるか。
私たちは大切ないのちを預かる仕事。そしてその大切ないのちを守る仕事。そのために、自分の足で、しっかり前に進みましょう。